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そもそも、こいつ――伊調みのりがギターを始めたのは俺のせいでもある。両親共に音楽家で父親はバイオリニスト、母親がピアニスト。母さんは俺が産まれたのと同時に一線を退いたが、俺が高校に進学したのと同時に音楽の世界へと戻っていった。というか、旧友からの連絡が来たところを俺が背中を押した。
そんな両親の影響もあり、俺だけでなくみのりまで小学生の頃にギターを始めたというわけだ。
「それにしても飽きないよな、ギター。人前で弾くわけでも無いのに」
「ん~、あくまでも趣味だからねぇ。ほら、こう――ジャジャーンって、難しいコードが弾けた時とか、耳コピが完璧にできた時とかにさ。あ~、最高! って感じになるじゃん? それが好きなんだよ」
「ふ~ん」
まぁ、わからないこともない。音がハマるっつーのか、心に音がハマるっつーのか……そういう時は確かに気持ちが良いと思う。昔の話だが。
「里桜もまたドラムやればいいのに。セッションしようよ、セッション~」
「やらねぇよ」
このやり取りも何度目かわからないが、あとは放っておけば勝手にギターを弄っているから俺は買ってきた漫画を読むことにしよう。
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