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当日の夕方、光に指定された駅に晴夜はいた。辺りには若い女性がたくさん歩いている。その誰もが晴夜を見ては小さく黄色い声を上げていた。ちらちら見られるのは煩わしい。変装でもしてこれば良かっただろうかと後悔する。
「お前、すごいな」
改札からマスク、眼鏡を身につけた一見怪しい男性が近づいて来た。近づいてくると、それが光だと分かった。周りの視線を一身に受けている。
「変装なしって、目立つだろ」
誰が言っているんだろうか。晴夜は光の頭の先からつま先まで一通り眺める。手には紙袋を持っていた。
「さ、行こう」
「どこに。俺まだ聞いてない」
光は晴夜の言葉を無視して歩く。晴夜は昔から言葉が足りないとよく言われていたが、光も言葉が足りないのではないだろうかと先を歩く相方の後ろ姿を恨めしそうに見た。
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