4.はじめての世界

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 何度同じ歌詞を歌っただろうか。一向にOKは出ない。体力には自信があったが、さすがに疲労を感じてきていた。スタッフの表情もみんな暗くなっている。晴夜は光のように歌ってみたりしたが、どうしてもぎこちなくなってしまう。どうすればいいのか見えない。 「一旦休憩しようか」  監督の言葉に張り詰めて淀んでいた空気が緩む。対して晴夜は苛立ちがこみ上げる。これほどまで何かで詰まったことはなかった。今まで何でもそつなくこなし、苦労したことはなかった。またしても初めてのことに戸惑う。そこに、あの、と光がやってきた。 「休憩終わったら、一度僕を撮ってもらっていいですか?」  緩んだ空気がざわつく。もうすでに撮り終えているのにどういうつもりだ。 「ちょっと別のパターンもやってみたくて。使えなかったら遠慮なく没にしてもらっていいんで」  どうして別パターンをわざわざやる必要があるのだろうか。メイキングのためのファンサービスのつもりだろうか。光の笑顔の下の真意は読めない。
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