4.はじめての世界

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 10分の休憩の後、光の撮影が再び始まった。曲に合わせて光が歌い出す。しかし、先ほどの明るくはつらつとした様子ではなく、動きも少なく、笑顔も抑えている。一言で言えば、クールといった印象だ。しかし、アップテンポなこの曲から外れるほど抑えてはいない。光の新たな引き出しに晴夜はまたしても目を離せなくなっていた。周りもみんな光に釘付けになっていた。 「じゃあ次、楠くんいこうか」  満足げな光と入れ替わりでカメラの前に立つ。距離の近いカメラの前に立つのも慣れたようだ。今ならうまくできるかもしれない。晴夜は曲に合わせて歌い出した。 「はい、OK!」  晴夜は目を丸くした。休憩を終えてからは1回目で終わった。特別休憩前と変えたつもりはなかった。あの時間は何だったんだ。何が正解だったのか、晴夜自身には何も分からなかった。
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