4.はじめての世界

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 その後、撮影は一切滞ることなくスムーズに進んだ。といっても時間はかかってしまい、終わった頃には夜の9時を過ぎていた。着替えを終えた晴夜と光は金田の車で帰路につく。今日も晴夜が中列、光が後列に座っている。 「あれ、何だよ」 「あれって? メイキング?」  それもあるけど、と付けるが、聞きたいのはそれではない。 「撮り直し」 「ああ。別に、ただ違うのもやってみたかっただけ。もしかしたら使われるかもしれないし」  嘘つけ、と心の中で毒づく。近藤光のファンの間でのイメージは、明るく元気な優等生だ。そして今回は明るい楽曲、ましてやポラリスの名刺となるデビュー曲だ。そんな人間がクールに演じてみたところで使われないのは本人が誰よりも分かっているはず。もしかして。 「はい、着いたわよ」  金田が車を停める。そこは晴夜の家の前だった。毎度、間が悪い。車を降りる時、ちらりと光の顔を窺う。何事もなかったかのように携帯をいじっている。その様子に腹が立った。なんてことない顔で助け舟を出されていたことに腹が立った。
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