4.はじめての世界

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 そこからは目まぐるしく日々が進んだ。歌番組の収録、雑誌インタビュー、ワイドショーのインタビュー、トーク番組。平日休日問わず仕事が入った。あちこちの店にポラリスの載った雑誌が並び、テレビ欄に名前が載ったこともあった。晴夜の通う学校でもかけられる声が、アイドルなんてどういった風の吹き回しだといったものから、CD買うからなといったものに変わりつつあった。リリースイベントの内容もほとんど固まり、あっという間にCDが店頭に並び始めた。その数日後、初めての生放送の歌番組収録日が訪れた。  歌番組の収録はいくつか行ってきた。しかし、生放送はどこか違う空気が流れており、晴夜は緊張しているのを感じていた。 「緊張してるか?」  リハーサルを終えて本番直前、光が尋ねてくる。緊張が顔に出ていたかとドキリとしたが、光の顔を見ると明らかに緊張の色が見えていた。それを見て少し緊張が和らぐ。 「別に。お前の方が緊張してそうだけどな」 「ふざけるな、俺は緊張なんかしてない」  何を強がってるのか。しかし、強がってるのはお互い様だった。
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