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「あの、楠先輩」
生放送から3日後、晴夜は学校の廊下を歩いていると、見知らぬ女生徒から声をかけられた。先輩と言っているので、3年生ではないのだろう。
「歌番組、見ました。曲もすごく大好きです! これからも応援しています!」
女生徒はお辞儀すると遠くにいた友達らしき女生徒ときゃあきゃあ騒いでいる。ため息を1つつき、教室に入った。
「楠、テレビ見たぞ。すげえかっこよかった!」
「生放送のあれ、見たよ。知らない人みたいでびっくりした」
「テレビ見てさ、CDすでに買ってたのに勢いで買い足してた!」
教室に入ってからもそんな声を次々とかけられる。そのおかげで、自分の席に着くまでいつもより大幅に時間を取ってしまった。普通ならありがたい、嬉しいといった感情を抱くのだろう。おそらく晴夜もそのはずだった。しかし、今回に限ってはそう思うことはできなかった。声をかけられるたびに、たくさんの人に見られてしまったことを改めて思い知らされていた。
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