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「あのミスがまだ響いてるの? ま、あんたは今まで失敗とか挫折とか経験してなさそうだし、プライド一丁前に高そうだしね」
けらけらと笑う金田に反論する元気もなかった。たしかに腑抜けてるなと心の中で嘲笑う。
「金田さん、来週末の仕事はどんな感じ?」
突然の質問に金田は驚くが、必死に記憶を引き出す。
「たしか、金曜日が雑誌撮影、土曜日がオフで日曜日はロケからのスタジオ収録。それがどうしたの」
「分かった、ありがとう」
おい、と光が軽く晴夜の背もたれを蹴る。アイドルが蹴るなよと思うが、ゆくゆくを考えて口にするのは諦めた。
「来週土曜、空けとけよ」
「何だよ」
「何でも」
金田も首を傾げていたが、あああれね、と納得した様子だ。自分だけが分かっていない状況に晴夜はいらだつ。しかし、教えてくれと懇願するのも癪だ。また、教えてくれと言ったところで教えてくれることもなさそうだ。いらだちを抱えたまま、静かに晴夜は車の座席に沈んだ。
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