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「楽山さん」
光が声をかけると、楽山と呼ばれた男性は声を上げて飛び跳ねた。光の顔を確認するとほっと胸をなでおろす。
「なんだ、光じゃん。シノかと思った」
「篠山さんに何かしたんですか」
「いや、まあ……」
楽山の目がきょろきょろと泳ぎだす。晴夜は初めて会うが、嘘が苦手なタイプなのだろうと感じた。
「太一!」
楽山の背後から声が聞こえる。楽山は再び飛び跳ねると光の後ろに隠れた。しかし、バレバレだ。
「お前俺のエクレア食っただろ。しかも3個!」
「シノが食べすぎるとお腹が出てみっともなくなるかなと思って」
「絶対そんなこと思ってないだろ」
「篠山さん、おはようございます」
光に気づいたのか、篠山と呼ばれた男性が表情を柔らかくした。暗い茶髪は左耳にかけられてピンで留められている。
「おはよう。見に来たの?」
「はい、今日は勉強させていただこうと思って」
「勉強なんて、俺らそんな大したことないよ。特にラクなんか」
光の背後で楽山がムッとする。
「俺は大したことありますー」
「大したことある奴が人の食べ物盗み食いするかよ」
また背後に隠れる。随分と年上に見えるが、なんて子どもっぽいんだろう。
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