5.みんなの笑顔

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楽山(らくやま)さん」  光が声をかけると、楽山と呼ばれた男性は声を上げて飛び跳ねた。光の顔を確認するとほっと胸をなでおろす。 「なんだ、光じゃん。シノかと思った」 「篠山さんに何かしたんですか」 「いや、まあ……」  楽山の目がきょろきょろと泳ぎだす。晴夜は初めて会うが、嘘が苦手なタイプなのだろうと感じた。 「太一!」  楽山の背後から声が聞こえる。楽山は再び飛び跳ねると光の後ろに隠れた。しかし、バレバレだ。 「お前俺のエクレア食っただろ。しかも3個!」 「シノが食べすぎるとお腹が出てみっともなくなるかなと思って」 「絶対そんなこと思ってないだろ」 「篠山さん、おはようございます」  光に気づいたのか、篠山と呼ばれた男性が表情を柔らかくした。暗い茶髪は左耳にかけられてピンで留められている。 「おはよう。見に来たの?」 「はい、今日は勉強させていただこうと思って」 「勉強なんて、俺らそんな大したことないよ。特にラクなんか」  光の背後で楽山がムッとする。 「俺は大したことありますー」 「大したことある奴が人の食べ物盗み食いするかよ」  また背後に隠れる。随分と年上に見えるが、なんて子どもっぽいんだろう。
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