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おうじーびーふ
「よくぞ参った、勇者ドナよ」
勇者ドナは玉座の間で、王様から直々のお言葉を受けている。
「ははっ」
勇者ドナは六歳なので、難しい受け答えはできない。
玉座の間に入る前に、「何を言われても『ははっ』と答えるように」と言われていたから、その通りに答えただけだ。
「勇者ドナよ。勇者の使命については、心得ておるな」
「ははっ」
「うむ。では規定通り、今日の正午、魔力還元の儀を執り行う」
「ははっ」
魔力還元の儀は、この五十年だけで十七回行われた。
これによって世界の魔力量が回復したという報告はないが、これのお陰でギリギリの状態を保てている、と専門家は言っている。
「王族からの殉還者は、第七王子アメデーオとなる」
「ははっ」
平伏して答える勇者ドナから視線を切り、王様は傍らに控える少年に目を遣った。
「アメデーオ、前へ」
「はっ」
王様に呼ばれた少年は、勇者ドナに並び立つ。
ドナよりも少し年上で、艶やかな黒髪に赤い衣装の美少年だ。
ドナは、そのキラキラした美少年を横目で除き見て、思わず「わぁ」と声を漏らした。
アメデーオはそれに気付くと、ドナの方を見下ろし、くすりと笑った。
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