第19話『奏楽出現』

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第19話『奏楽出現』

御崎坂高校は、放課後を迎えた。 生徒会長の鶫はHR終了後、放課後にある生徒会の会合の為、生徒会室に向かっていた。 生徒会室に着くと、他の役員達はまだ誰も来ていなかった。 鶫は一番奥にある自席の会長イスに鞄をおくと、うーんと背伸びをしながら窓際に立った。 今日の天気は雨こそ降らなかったがずっと曇っている。 灰色の空の下、生徒達が校門をくぐって下校していくのが見えた。 …いいものだ。 鶫はこの光景を眺めるのが一つの楽しみだ。 一日の授業を終えて帰ってゆく生徒達の足取りや表情を観察し、今の校内の風紀がどんなものか確かめている。 この日も、帰りゆく生徒達の表情には疲労感とか解放感といった重苦しいものは感じられない。 青春思春期の人間らしく、若々しい足取りと表情で学校を後にしてゆく。 その光景を眺めている彼女の頬に満足そうな微笑が浮かんだ。 生徒会長に就任してから二年、弛みや淀みのない風紀をつくりあげた自身と手腕を誇りに思う。 この快感を、是非とも次の世代にも伝えてやりたいものだ。 …そう、紗奈・黎埜・雅人達に。 次の生徒会長の椅子を争っている三人の姿を思い浮かべ、鶫は微笑した。 と、 「ん?」 不意に鶫は眉をしかめた。 校門を出て少しの路上傍に、二人の人間がいるのが目に入ったからだ。 二人とも本校の生徒ではない男女の若者だ。 誰かを探しているのか、帰りゆく生徒達に目を光らせていた。 「あれは…。」 二人の内の片方の顔に、鶫は見覚えがあった。 …奏楽(グルーブ)じゃないか。 とするともう一人は『現実沈黙』の奴か? 【水師営】の者がここに来ているということは… 鶫にはその理由がすぐに分かった。 「…。」 鶫は窓際から離れ、会長イスに腰を下ろした。 紗奈と【水師営】。 これは校外の問題だ。 我々生徒会が干渉すべきことではない。 (…紗奈、覚悟して行動したまえ…) 可愛がっている後輩に向け、鶫は胸の内で呟いた。
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