第2話『公園』

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公園を出た後、春の夕焼けに染まる県道沿いの帰り道を、隆志とちづるは並んで歩いていた。 道中、北風が何度も音をたてて二人に吹きつけた。 隆志は時折寒そうに手に吐息を吹きかけていたが、ちづるは全く寒そうな仕草をしなかった。 「お前、寒さに強いんだな。」 一旦立ち止まってマフラーを巻き直しながら、隆志はちづるを見て感心したように言った。 「寒さには、強い方かもしれません。」 ちづるはそれを手伝いながら少し微笑った。 「そうなのか。なら、何であの時倒れていたんだ?」 マフラーを直すと、隆志は不思議そうに尋ねた。 するとちづるは少し俯いて、 「…あの時は、すごく疲れていたので…。」 始めて会った時のような小声で答えた。 「そうか。まあ疲労プラス寒さには誰も叶わないだろうからな。」 隆志は笑ってそう言うと、再び歩き出した。 ちづるも表情を戻し続いた。 その後、二人が家の近くにまで戻った時、 「そうだ、」 隆志が思い出したようにちづるに言った。 「お前、苗字どうする?」 「苗字、ですか?」 妙な表情をしたちづるに、隆志は説明した。 「今日会った朝也、伸太郎、カオリ以外の人には、お前の事は自分の従兄妹だと紹介するつもりだ。だから念の為、お前に親戚の苗字をつけようと思ってるんだ。」 「…そうですか。」 不思議そうに頷いたちづるに、隆志は腕を組んで言った。 「自分も大分考えたけど、きりがないからお前に決めてもらう。…豊田と達川、どちらの苗字が良い?」 隆志の問いに、ちづるは少し考えてから答えた。 「日野が良いです。」 「日野?」 驚いた隆志に、ちづるは笑顔で続けた。 「私、この町に長くいます。その間、苗字だけでも隆志さんと同じでいたいのです。」 ちづるの言葉に、隆志は少し思考しやがて、 「分かった。」 笑顔で頷いた。 「今日からお前の名前は日野ちづるだ。いいな?」 「はい!」 ちづるは満面の笑顔で頷いた。 寒気の中、暖かい風が吹いた気がした。
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