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(…こいつ、いよいよおかしいな…)
半ば、というかもはや完全に呆れた隆志は、苦い表情でしばらく思考していたが、やがて決断して言った。
「分かった。お前をうちに居候させる。」
「居候?」
首を傾げたちづるに、隆志は湯呑みを持ちながら説明した。
「ここに住ませてやるって事だ。…こんな寒い中頭のおかしい少女を外に追い出すのも気がひけるしな…。」
全くと、ボソと呟いてから、
「幸いうちは、以前から両親とも仕事で海外に行ってて自分以外は誰も居ないからな。自分の自由に出来る。ただ、」
今度は隆志が真面目な口調になった。
「お前に関して何か情報が入った時、あるいはお前を探している人等が現れたら、直ぐに出て行ってもらう。それまでの事だ。分かったな?」
隆志の言葉を聞くと、ちづるはこくりと頷いた。
「はい。ありがとうございます、隆志さん。」
ほっとしたように、笑顔を浮かべた。
その笑顔を見て、隆志は溜息をつきながら苦笑し、湯呑の中のお茶を一気に飲んだ。
******
その日から、高校生日野隆志は謎の放浪少女ちづると一つ屋根の下で暮らしはじめた。
居候させたとはいえ、彼女に関してはすぐに情報とか何か入るだろうと隆志は予想していた。
だが何日経っても、ちづるに関する情報もちづるを探している人も現れなかった。
不思議に思う中、日々は過ぎていった。
そんな中、ちづると暮らしはじめて段々分かったことは、彼女は温厚で明るさも備えている性格で、礼儀も正しく清廉な感じの強い少女だった。
また雰囲気もどこか大人びいた落ち着きを醸し出しており、外見とは違う年季を感じた。
そして不思議なことに、共に暮らしはじめてから日が経つにつれ、隆志はちづるに対して他人という違和感を感じなくなってきていた。
いつしか、二人は自然に生活をするようになっていた。
まるで元々の家族のように。
やがて暦は四月間近になり、隆志が通う御崎坂高校の新学期が迫った。
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