前編

2/9
前へ
/27ページ
次へ
連星を繋ぐ長大な生命(いのち)の紐――世界樹。その末端にあり、樹冠であり根でもあるそこには、人の手による町があった。そこは町が出来る前から“ウルダルの園”と呼ばれ、最初の探検家達が橋頭堡を築いて以来の歴史があった。  探検隊は過去、何度も送り出された。新大陸発見後の大航海時代の再来を夢見て、様々な国家や団体が彼らに資金を提供した。  まず世界樹の幹踏破が極めて困難な冒険だった。29万kmといういまだかつてない長大な距離。水も空気もあるとはいえ、幹からほんの少し離れればそこには暗黒の死の世界がどこまでも広がる。旅路は一直線ながら、途中、長短幾つものの枝が四方に伸び、探検隊の一部は枝に迷い込んでそのまま行方不明になった事も何度もあった。そうしてようやく世界樹の先端、樹冠帯に到達した時、二百数十名いた隊員は7名になっていた。その7人は帰路に更に人数を減らす事になる。  最初に到達した探検隊は、低軌道上に浮かぶ幾つかの世界樹の破片も発見した。破片と言っても最大で差し渡しが14kmもあり、世界樹と同じ力で重力に干渉して浮かび続けているようだった。その最大の浮島はYgd―ti―1と名付けられた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加