廃家の姿見

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友人のSとふたりで真夏の深夜に肝試しにいったんですよ。 市内にある割りと有名な心霊スポットでね、僕も何度か行ったことがあって、廃墟になった一軒家なんですけど。 それでね、その心霊スポットにひとつだけ絶対にやってはいけないと噂されていることがあるんです。 それがなにかというと──。浴室に備え付けられた姿見を正面から見てはいけないというものでした。 なんでもそれをすると、事故に遭うとか、原因不明の突然死するとか、まあ色々と噂がありました。 僕も何度か肝試しに、ここには来たことあるんですけど、それだけは僕も、仲間たちもやったことはなかったんです。 その日、なんとなくSとの話の流れでやってみないってことになったんですよね。 廃家に着いて、簡単なフェンスで囲まれてるんですけど、それを乗り越えていつもの入り口から侵入しました。先客はいないようで辺りは静まり返っていました。 家の中は前に来たときとさほど変わらず、誰が置いたのかマネキンの頭部に血糊をつけて箪笥の上に置いてあったり、汚い字で暴走族のチーム名をスプレー缶で書いてあったりと、いつもの様子。 今日の目的は浴室なので、あまりうろちょろせずに真っ直ぐに向かいました。 ふたりとも、もう馴れたもので、浴室に続く廊下まであっという間に着いたんですよ。 そこでSがね、ふたりで行ってもつまらないからひとりずつ行こうなんて言い出したんですよね。
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