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2告白もなしにキスをねだられる
そんな甘酸っぱい初恋状況の中で、由芽のほうからキスしようと言ってきたのだ。
告白もなしに、一足飛びに。
「由芽、なんだよ、藪から棒に」
「だから、健人とキスがしたいんだって。健人も悪い気はしないでしょ? 私、かわいいし♪」
ドギマギして顔が熱くなっていくのを感じる。
心臓が飛び出そうなほどバクバクしていて、由芽とのキスに期待が膨らんでいく一方で、由芽の気持ちがさっぱりわからないのが困りモノだ。
決心がつかない。
「それとも……キスができないほど、私って健人にとって大切な弟かな?」
由芽は嬉しそうに笑ってる。昔はよく「妹っていうより、弟だよな」って言っていた。それは男っぽい遊びを一緒にするのに、小学時代の同級生を納得させるための言葉だった。
女子は女子、男子は男子みたいな同調圧力が強くなる小学生の時期に、俺も由芽もお互いに離れがたいと思っていたことで出来上がった関係。
俺が由芽を異性として意識し始めても、由芽がかわいらしい服装を好むようになっても、由芽は俺の弟のようであり続けた。
「でもさ、気心のしれた"弟"がこんなかわいい女の子なら、試しにキスくらいしたってよくない?」
「いやいやいや、それじゃ男同士じゃん」
「私は健人の弟だけど、一応女の子だよ? ね、いいじゃん、減るものじゃないし」
告白されてキスをねだられていたなら、喜び勇んで応じたと思う。けど、そうではないからどうしようも無かった。
「もう、うじうじして男らしくないなあ」
しびれを切らした由芽は俺の唇を強引に奪ってきた。
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