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4サキュバスは尻軽なのは仕方ない
由芽がサキュバスになって、最初のうちは由芽が俺にキスを求めてくるっていう奇行以外に人間をやめたという実感はなかった。
けれども、1年経った頃には確かに不老になっていると感じられた。思春期の少女から大人になる変化の途中でそのまま時をとめてしまっていたからだ。
高校に進学する頃には、より顕著になっていた。他の女子よりも一回り小柄で、子供っぽい容姿は周囲から浮いていた。
けれども、由芽は美少女だ。それくらいのハンデはモテることへの障害にはなりはしなかった。
由芽は俺以外ともキスをして生気を集めるようになっていた。
かわいらしい容姿で、誰彼構わずにキスを求めていく由芽に、いい評判が立つはずもなかった。
「おい、由芽。最近、評判悪いぞ? 何股もかけてる、かわいいからって調子乗ってるってさ」
「そうなの? 別に好きだからキスしてるんじゃなくて、ご飯みたいなもんだし、浮気とか二股とかそういうんじゃないけどな」
「そんなこと、周りは知らねーし、信じねーよ。なあ、俺とだけじゃ……ダメなのかよ?」
「それだけじゃ、お腹空いちゃうから」
こういう時、由芽の瞳は妖しい紅い輝きを放つ。人間じゃないのだと実感する一方で、そんなことより俺とのキスも続けているのに、他の誰かともキスをしているのがたまらなく堪えた。
ビッチ、あばずれ、淫乱、尻軽女など、由芽の悪評は街中に響き渡っていた。
成長しない容姿とあわせて「人間じゃないんじゃないか」なんて真実を言い当てた噂さえ立っていた。
「そろそろ、潮時かなぁ」
高校の卒業式の後、由芽がそうつぶやいたのを聞いた。
俺は東京の大学に進学して、一人暮らしを始めた。生まれた時からずっと一緒だった由芽と初めて離れ離れになった。
そして、4月に入ってしばらくして、由芽が川に落ちて行方不明になったと実家から連絡がきた。
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