1気になるあの娘が人間をやめた

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1気になるあの娘が人間をやめた

 中学2年生の夏。  気になるあの娘が人間をやめた。   「ね? 健人、キスしよ?」  夏休みに入る直前、終業式後の教室でのこと。  生まれた時からの幼馴染・由芽が突然キスを迫ってきた。 「私、今日から誰かとキスしないと生きていけない身体になったの。でも、いきなり知らない誰かに頼むのは怖いし、私って彼氏もいないでしょ? だったら、ファーストキスは健人が無難かなって」  子供の頃から変わらないニカっとした笑顔で歯を見せた。  家が近所で、母親同士の仲がよかったことから、兄妹のように育った由芽と俺・健人。  いや、どちらかというと兄弟のように育った。  いつも一緒になって泥にまみれて野山を駆け回り、仮面ライダーとプリキュアになり切って激しい格闘戦(ごっこ)を演じ、小学校では一緒にサッカーで汗を流してきた仲だ。  それが中学校にあがったくらいから、由芽は急速に美少女になっていった。それまで短パンにランニングシャツみたいな男児っぽい格好だった由芽は、中学校の制服でほとんど初めてスカートを履くようになってから、かわいい服装に興味津々になっていった。  それでいて、普段の態度は小学校の頃から変わっていなくて、いつも俺と一緒にいた。  同級生の男子からは「夫婦だ」「カップルだ」などとからわれるし、俺自身も由芽を美少女として意識せずにはいられなくなっていて、気軽に身体を近づけてくる由芽にいつもドキドキしていた。  由芽を幼馴染以上に感じていながら、今の関係が壊れるのが怖くて、踏み出そうとする勇気を持たなかった。
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