教室で

2/5
前へ
/5ページ
次へ
 手持ち無沙汰で里奈は自分のスクールバックを漁る。一番幅を利かせている化粧ポーチを退けて、次に雑誌を退けて、教科書を退けて、やっとお菓子を見つけて取りだした。  筒状のそれを出すと、スクールバックを隣の空いている席に投げた。そんな里奈に「投げんなよ」と顔を上げずにイチが注意した。  真面目なイチを無視して、ぺりぺりっと上の紙をはがし、お菓子を見下ろす。   半分はクラッカー。四分の一は色とりどりのあられ。残りはとろっと緩いミルクチョコレート。  棒状になったクラッカーを一本引き抜くと、ミルクチョコレートを掬ってぱくりと口に入れた。小さい頃からお気に入りのお菓子。甘くて遊び心があって、里奈はこれが大好きだった。  ちっともこっちを見てくれないイチよりもずっとずっと好きだ。無言でバクバクと、チョコレート付きのクラッカーを次から次へと口の中に入れては噛んでいく。  ポリポリと教室に里奈の噛んでいる音が響いていた。それでもイチは黙々と問題を解いていく。  遠くで運動部の掛け声がしている。里奈の食べる音の合間に、それが聞こえてくるほかは邪魔するものもなかった。     
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加