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手持ち無沙汰で里奈は自分のスクールバックを漁る。一番幅を利かせている化粧ポーチを退けて、次に雑誌を退けて、教科書を退けて、やっとお菓子を見つけて取りだした。
筒状のそれを出すと、スクールバックを隣の空いている席に投げた。そんな里奈に「投げんなよ」と顔を上げずにイチが注意した。
真面目なイチを無視して、ぺりぺりっと上の紙をはがし、お菓子を見下ろす。
半分はクラッカー。四分の一は色とりどりのあられ。残りはとろっと緩いミルクチョコレート。
棒状になったクラッカーを一本引き抜くと、ミルクチョコレートを掬ってぱくりと口に入れた。小さい頃からお気に入りのお菓子。甘くて遊び心があって、里奈はこれが大好きだった。
ちっともこっちを見てくれないイチよりもずっとずっと好きだ。無言でバクバクと、チョコレート付きのクラッカーを次から次へと口の中に入れては噛んでいく。
ポリポリと教室に里奈の噛んでいる音が響いていた。それでもイチは黙々と問題を解いていく。
遠くで運動部の掛け声がしている。里奈の食べる音の合間に、それが聞こえてくるほかは邪魔するものもなかった。
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