おんなの、たたかい。

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従来の人海戦術では領土が広がれば等比級数的に兵士が増大する。しかし、農民の徴兵には限界があるため、人間でない者に戦闘を代行させることにした。 航空騎兵たちの物だった翼竜に特別製の手綱をつけた。これによって遥か後方から居ながらにして航空攻撃が可能になる。 ソネットは太腿の上に乗せた焼き菓子をつまみながら得意げに言った。 「ベルゼビュートの拠点をぶっ飛ばしてやったの。アデリーヌ。あ・な・たが乗るはずだったワイバーンでね!」 氷柱に次から次へと武勇伝が流れていく。翼竜は魔法誘導弾や雷樽を高高度から雨あられと降り注ぐことができる。 龍の眼から見た古城が手前に迫ってきたかと思った瞬間、眩い光に包まれた。 「ちょ、これって? ああっ!!……」 アデリーヌはあっと息を呑んだ。カザヌー卿はベルゼビュート軍と王国の和解を担っていた超大物で、泥沼の闘いに終止符を打つかと思われていた。 武器商人か戦争続行を望む急進派に暗殺されたものと報じられていたが、真相は違った。 「あたしが殺ったの!」 ソネットはこれ見よがしにドヤ顔をする。 「あなたねぇ……」 正々堂々をモットーとする騎士道はどこへ行ってしまったのか。アデリーヌは失望した。これでは卑怯極まりない魔王と同じだ。 最強の証とは公正誠実であること。近衛師団の門標を揮毫したのは他ならぬガウスだ。     
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