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「ガザヌーは二重スパイよ。王国要人の挙動を漏らしていた」
「だから、吹き飛ばしたの? 家族や居城の召使たちは?」
「全員がスパイよ。たぶん」
「たぶんって、確かな証拠はないの?」
アデリーヌが信じられないとかぶりをふる。
「ガウス卿暗殺の動きがあった。だから、先手必勝」
小悪魔は当たり前のように言う。
「後悔の念はないの? もし、濡れ衣だったら?」
正論を振りかざすアデリーヌ。
「本当だったら、今ごろ王都は滅んでる」
ソネットはじっと俯いてスカートを濡らした。
「あたしが平気でいられると思ったの?!」
真っ赤に目を腫らしてアデリーヌにつかみかかる。胸が張り裂ける思いは判らないでもない。
ワイバーン乗りは地上の騎士よりも多くの命を奪う。切り結ぶより卑怯だという誹りを免れない。名誉の戦死よりも自害を選ぶ乗員もいる。
「わたしが言うな、ってことよね」
アデリーヌはソネットの黒髪をそっと撫でた。
「正直言って、あんたが来てくれてあたしは感謝してる。色んな意味で」
縋るような目つきで見上げてくる。
「孤軍奮闘は今日でおしまい」
アデリーヌはしっかりと小悪魔を抱きしめた。
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