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氷柱はカーテンごしに蠢く人影をクローズアップしている。
「あなたねぇ」
アデリーヌは小悪魔の品性も可愛さの内だと諦めかけていた。バウチャーの活動ぶりは昼夜を問わず、出入りする女性も絶えることがない。
「ねぇねぇ。すっごくヤバいの。聞いてみる?」
ワイバーンが盗み聞きした会話をソネットが再生しようとする。
「聞きたくない。それより、魔王との接点はつかめたの?」
アデリーヌは録音済み水晶をホムンクルスに手渡した。ちくいち、内容を聞き起こして日報に記さねばならない。眷属の仕事だ。
「司祭が交信するとすれば、破邪星が出ている間よ」
ソネットに教わったところによれば、司祭は悪魔の星に祈りを捧げる形で盗聴を逃れているという。水晶や召喚ゲートを用いた通信は高出力の魔法に妨げられる。
破邪星は災いを司る星だ。呪いの類も含まれる。企みごとを悪意に混ぜて捧げれば、それを抽出したり妨害することはできない。その行為自体が悪意に呑まれる。
「ちょっと待って!」
アデリーヌは変化を見逃さない。もろ肌を脱いだバウチャーと、急所を宝石で申し訳程度に覆った女が庵の外に出てきた。
画面が激しくぶれる。翼竜の視点が泳いでいるのだ。
「ちょっと、ちょっと! だめ、ダメよ! いい娘だから! 今はお預け」
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