恋帽子

2/2
前へ
/2ページ
次へ
気温35度。 今年も夏がやって来た。 こんな日はクーラーの効いた部屋でゴロゴロしたいのに、クラスのグループで古戦場散策とは恐れ入った。 「帽子は好きじゃないんだけどなぁ……似合わないし」 そんな性格なので、生憎可愛いものを持ち合わせておらず、ニューヨークヤンキースの野球帽を母親に押し付けられる羽目になった。 私はそれを深くかぶる。 あー、クラクラする。 その時、ひょいと帽子を取られた。 私は風で飛んで行ってしまったのかと慌てて手をバタバタさせる。 「男っぽい帽子だねー。どう?」 同じクラスの彼は、そう言って私の帽子をかぶった。 そして、ゆっくり私の頭にかぶせ直した。 「なーんて。お前、帽子似合うじゃん」 あーあ。 クラクラする。 恋の熱だ。 そうして、あのギラギラ輝く日差しを眺めた。 「…なんだよ、もう」 あっつ。 私は、夏に呑まれる。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加