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納品作業をしていた彩香は、突如、店内に響き渡った女性の悲鳴を聞いて、何事かと声の方へと走った。
同じように悲鳴を聞きつけた客や従業員が集まってくると、なかなか声の主を見つけられない。
「みなさん、下がってください。危ないですから!」
そう声を上げたのは、この店の店長、日下部だ。
「下がってくださーい!下がって!」
別の社員が店長と一緒に客の整理を始めると、彩香は人の間を縫って店長へと駆け寄った。
何に驚いたかって、日下部店長が彩香の顔を見て、ホッと息を吐いたのに驚いた。
「折原さん、急いで警察に電話してください」
離れようとしない客たちを両腕で押しながら、彩香に目配せをする。
ふと、その視線の先に目を向けて気付いた。
おもちゃコーナーのパズルの並んだ棚上に、透明な瓶が置いてあった。
液体の入った瓶の中に沈むそれを、彩香は昨日、借りてきた海外ドラマの中で見た。
問題は、それが何か…ではない。
なぜ、ここにあるのか……。
慌てて人垣を抜けると、事務所兼休憩室の隣にある更衣室に駆け込む。
バッグから携帯電話を取り出すと、野本に電話を掛けた。
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