事件です

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電話を掛けながら、また事務所を出て店内へ。 何度か掛けてみたが、野本がなかなか電話に出ないから、やむを得ず五十嵐に電話を掛けた。 五十嵐もなかなか電話に出てくれなかったが、諦めかけた時にスピーカーの向こうから五十嵐の声が聞こえた。 『悪い、今ちょっと立て込んでる……』 五十嵐の声の向こう側は騒がしく、何か事件に追われているのだろうと気付いたが、そうも言ってられなかった。 「店内で瓶に入った眼球が見つかったの」 彩香がそう言うと、五十嵐は『チッ……』と、舌打ちした。 『すぐに行くから現場保存して。客は帰らして。で、帰る客の写真とか撮っておいて』 そう言った後、電話を切る前に、 『市内のあちこちで人間の体の一部が入れられた瓶が発見されてる』と、告げた。 どうやらこの店だけで起こっている事件ではないようだ。 「分かった。とりあえず言われた通りにするね」 そう言って電話を切った後、人垣を抜けて日下部店長に歩み寄り、簡単に今後の事を説明した。 普段は腰の重い社員たちが、店長に指示されて慌てて走り回る。 数秒後、日下部が店内放送を掛けて閉店のお知らせをしたが、なかなか客は店内から出て行ってはくれず、従業員が必死で声掛けを行い、出口の方へ客を追いやっていく。 まるで羊飼いみたいだな…と、思いながらその様子を横目で見て、彩香は周囲を確認する。 従業員も近づかないように簡易のロープを結んで侵入を禁止したが、実際、カメラから死角になる位置に置かれた瓶が、いつ、誰の手によって置かれた物かは分からない。
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