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割と短時間で五十嵐たちは帰って行ったが、お店の方は、本部への報告もあって、なかなか当日中に営業再開を果たすことはできなかった。
それどころか、ビルの外にはマスコミが押し寄せ、帰宅しようとする従業員にマイクを向けるから、何人かで束になって、何が何でも口を割らないように逃げ帰ったくらいだ。
自宅に帰った彩香は、郵便受けに挟まったハガキを見て、ため息を吐いた。
中学校の同窓会のお知らせハガキだった。
ハガキを持ったまま部屋に入ると、ソファに座ってそれを眺める。
幹事は皆藤真貴子。旧姓は佐々木真貴子。
当時、クラス委員だったクラスのマドンナ。
美人で頭もよく、バレー部のエースだった彼女は、毎年、実家に年賀はがきを送ってくれる。
同窓会長であるという使命感からか、結婚して姓が変わっても欠かすことなくはがきを送ってくれる彼女に、彩香も半ば義務的に年賀状を送っていた。
正直、皆藤が年賀状を送るのをやめ、ラインで年始のあいさつを始めたなら、彩香が年賀状を書く事は無い。書く相手もいないし、送ってくる人もいないのだから。
生命保険と通販会社から送られてくる年始の挨拶ハガキくらいしか郵便ポストに投函されないから、年末年始を特別に感じた事は無かった。
『同窓会のお知らせ』
文面を見ながら、当時を思い出し、暗い気分になる。
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