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「はとこの英二。これでも二十三歳」
上総の即答に英二は眉根を寄せると反論した。
「別に『これでも』は必要なくない?」
「先に言っておいた方が後腐れないと思って。だって全然、二十歳過ぎにも見えないじゃん。言っておかないと小林さんのことだから、早苗と同じ歳とか思われちゃうぜ、ねぇ小林さん?」
上総の話し振りに小林は少し言葉をつまらすと、
「いや、そこまでは……。まぁ、上総くんと同じ歳くらいかな、とは思ったけどね」
小林の答弁に、英二はえーと不本意に顔を歪ませた。そして、
「そんなに見えないかなぁ……」
と、あまりに本気で塞いでみせるから、小林は慌ててフォローに走った。
「いやまぁ、都会でならいそうな感じだけどね。で、きみは、えーと、どうしてここに?」
「居候しに」
「静養しに、でしょ、お兄ちゃん」
早苗はすかさず上総の揶揄を取り上げて改めて小林に説明をした。
「先月の始め頃から、静養目的でここに。そういえば小林さんに連絡するの、忘れてたわ」
「いや、まぁ、いいんだけどね。ここは君達の家で、邑竹の家の本家だからね。ただ、うん、連絡くらいは欲しかったかもな。一応、僕は君達の保護者だから」
小林の言葉に早苗は曖昧に微笑みで返した。まさか小林の手の者かもしてないと思って、などと、正面切って言えるわけないのだから。
もっとも早苗自身、そんな疑いを持っていたこと自体、この二ヵ月の間ですっかりと忘れていたわけだが。それでもこうしてあからさまに動揺して見せてくれた小林を前にし、これで完全に英二と小林の繋がりはないのだと知れて、必要なかったが一応胸を撫で下ろした早苗。そして。
(ポーカーフェイスの一つも出来なくて、よく弁護士が務まるものね……)
微笑の裏に隠れた早苗の本音は、なかなかにシビアだった。
小林は円らな瞳で英二を見やると言った。
「上総くんと早苗ちゃんのはとこだって言ったね。きみの姓は?」
「諏訪だよ。英二はぼんぼんの次男坊だから、田舎くんだりまで来て遊び暮らしてんのさ」
「遊び暮らしてるって……そんなの、上総だって似たようなもんじゃないか」
「俺はこの家の跡取り。───文句あっか?」
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