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「雲の上はいつも晴れ。安井さんに会って注文をもらうようになったあの頃から、店も上手く回るようになっていった。あの日、あの人を追って立ち飲み屋に入ったことで運が開けたんだな」
真司は、常次郎の昔話が楽しかった。
他にも常次郎の話す「あの人」にまつわる話をいくつか聞いた。
大雨の日に配達をしていて、あの人を見かけて追って行って、見失ったと思って振り返ると、さっき渡りきった橋が濁流に流されて命拾いをした話。
包丁を研ぐ時に仕上げとして今も使っている特別な水を、山の中の泉で見つけたときにも、あの人が現れたらしい。
何年かに一度、あの人が現れては、常次郎に幸運をもたらしてくれたという。
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