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「おはよー。
ねーイチゴ、今日時間ある?
ワンピース欲しいから、見に行くの付き合って欲しいんだけど」
一足先に登校していたナナが、私を見つけて話しかけてきた。
いつもの私なら笑顔でOKと言うところだけど、今日は手を合わせてゴメンのポーズをする。
「今日はダメなの。ちょっと用事があって」
「あ、カズ君とデート?
いいよ。そっち優先して」
「そうじゃなくて、歯医者予約してあって」
そう、あれからほぼ毎週のように歯医者通いが続いている。
虫歯だったところに詰め物をしてもらって、
ヤッター!これでおしまい!!
と内心喜んでいる私に、
「苺香さん、暫く歯医者行ってなかったでしょ?
小さな虫歯が何本かあるから、それも治療しちゃいましょう」
と先生は当たり前のように言ったのだ。
「えー、でも痛くないし……」
「放っておくとまた痛い思いをしなきゃいけなくなるよ?
小さい子だって頑張って治療に来てるんだから」
と治療の必要性を説く先生の目がキツくなったような気がした。
イケメンが目に力を入れるとマジで怖い。
「はぁい」
私の返事に先生が目を細めた。
そうすると目力が和らいで甘さが出る。
この表情が特に私のお気に入り。
この顔が見たくて不承ながらも歯医者通いを続けていたのだ。
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