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「うっ、いった~」
大好きなアイスを口にした瞬間、奥歯にズキッとした痛みを感じた。
「大丈夫?」
親友のナナがチョコミントを手に心配そうに私を見ている。
「うん。ただの虫歯だから。
前からちょっと痛かったんだけど」
「歯医者、行きなよー」
「平気だよ。我慢出来ないわけじゃないし」
そう言って私は再び大好きなアイスに口をつけた。
この口の中でちっちゃなキャンディーが弾ける感覚と、爽やかな甘さがたまらない。
なのに、
「痛っ」
ジクンとくる痛みは至福の時間さえ私から奪っていく。
「やっぱり行ってきなよ」
「いい、大丈夫だから」
「あー、もしかして」
ナナはそこで言葉を止め、ニヤッと意地の悪い笑みを浮かべた。
「なによ?」
「イチゴ、歯医者が怖いんでしょ?」
図星。
小さいときに連れて行かれて以来、あの独特の匂いもキーンという音もガガガ、ジジジっていう音も大っ嫌いだった。
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