ギフト

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「ピンポーン」 設置したばかりの、インターホンが鳴った。 この中古住宅に越してきて一週間。 ようやく、業者にインターホンを設置してもらい、今日初めての来客である。 画面を覗くと、どうやら宅配業者らしい。 何か頼んだっけ?いや、そんなはずはない。だとしたら、実家から何か送ってきたか? 「どちら様でしょうか?」 「〇〇運輸の者ですが、お届け物です。」 「はい。」 そう答えると、俺は玄関のドアを開けた。 「滝沢 寛治様ですね?」 そう問いかけられ、俺は 「いいえ、違います。」 と答えた。 すると、その宅配業者の若者は、何度も住所を確認し、 「〇〇町2丁目5番地10号で間違いないですよね?」 と言うので 「ええ、住所は間違いないですが、たぶん、それ前に住んでいた人じゃないですかね。」 と答えた。 郵便受けに、一度、その名前で郵便物が来ていたのを思い出したのだ。 宅配業者の若者は、その品物、おそらくお中元とみられるものをそのまま持ち帰った。 前の住人は、転居届を出していないのかな。 それからもたびたび郵便物が滝沢の名前で届き、いい加減ウンザリしてきた。 仕方ないので、それをすべて不動産屋に持って行き、元の住人に届けてくれるように伝えた。     
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