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ところが、元の住人の転居先がまったくわからないのだという。
一応、今までの郵便物は預かってくれたが、その後は自分で処分してほしいと言うのだ。
まったくもって迷惑な話だ。
まあ、郵便物なら処分すれば良いだけの話だ。ところが、結構な頻度で品物が届くのだ。
今の時期はほとんどが、お中元で、そのたびにお引き取りいただくのだが、悪質な業者は、そのまま置いて行く者も居るので、その度にその業者に連絡を取るのはなかなか手間がかかる。
俺は、いつしか、面倒になり、その商品をそのまま自宅に放置するようになった。
気になって開けてみることもあり、だんだんと罪悪感は薄れ、賞味期限が短い物に関しては、こっそり自分で消費したりもした。
今日も自宅のインターホンが鳴らされ、仕方なく出て対応すると、今回は現金書留だという。
見れば、結構な厚みの封書である。
俺は魔がさした。
「滝沢 寛治様で間違いないでしょうか?」
「・・・はい。」
「すみません、では、ここに印鑑をお願いします。」
「すみません、印鑑は今どこにあるのかわからないので。」
「ああ、ではサインで構いませんよ。」
俺は、以前郵便物で見た滝沢寛治の文字をそのまま、そこにサインをした。
罪悪感はあったが、目先の大金に目がくらんでしまった。
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