第11章 人生だとか愛だとか

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焦らせたり急かしたりしたくないから、持ち帰って納得いくまでじっくり検討したらいい、と物分りよく言ってくれたけど。自分に都合がいいからこの話を受けるってほど簡単には割り切れない。 それに。もし万が一、そういうことになったりしたら。 「…なんか、上の空だよね。さっきから」 気がつくとテーブルの向かいの席から、エニシダさんの表情の薄い曇りない目がじっとわたしを見つめていた。 しまった、油断したつもりはなかったんだけど。わたしは慌てて何でもない普段の穏やかな表情を作る。 自分の部屋で一人でいる時や、ここへの往復の途上とかについぼうっと考え込んじゃうのは仕方ないと思うけど。こうやって二人で静かに過ごしてる時、初めて一緒に作ったご飯を食べようって正にそのタイミング。ここで自分ひとりの考えの中に沈んじゃうのはちょっとやばい。 さっきまでちゃんとエニシダさんと向き合って会話できてたと思うのに。ちょっとした思考回路の弾みですぐに頭が逸れていってしまう。 何の話をしてたんだっけ? 「えーと…、美味しいよ、唐揚げ。柔らかくジューシーに揚がってるよね。初めてとは思えないよ」 確か料理の味の感想を訊かれてたんじゃなかったっけ。そう思い出して笑顔で述べると、彼は完全に疑惑を払拭できたとも言い切れない顔つきで微妙な口調になり返してきた。 「それはまあ、いいけど。味つけしたのはどっちみち君だし」     
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