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さっきちゃんと電話に出て対応したけど。連絡がつかないことも考えてここにも張り紙をしておいたに違いない。そんな保険はかけないで欲しい、とか言える立場でもないのか。ちゃんと宛名から下は折り畳まれて張られてはいたし。
黒々したでかい手書きの字でばん!と『滞納した家賃払え』とかいきなり張られるよりだいぶ穏やかだと言えなくもない。
口早に説明しつつ紙を更に小さく折り畳み、バッグに放り込む。エニシダさんは表情を変えなかった。じっとわたしのその手許の動きを見つめている。すごく気まずい。
「…とりあえず立て替えましょうか、僕」
「いえあの。お気持ちはありがたいですが。今度は縁田さんにお返しする目処がなくなるって言えばまあそうかなと」
根本的な解決にはならない。お金の事情が絡むことで、エニシダさんとの間がかえって気まずくなることになったりしたら…と思うと。
この人にとっては大した金額じゃないのかもなぁ、と情けなく思いつつも。簡単に頼る気にはなれない。
彼は容赦のない真っ直ぐな眼差しで、わたしを見つめて問いかけた。
「そしたら、どうやってそのお金を調達する気なんですか?」
そこをストレートに突かれるとなぁ…。
「ご実家に頼むとか?」
「うーん、それも。…なかなか難しい面があって」
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