第11章 人生だとか愛だとか

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まあ、毎日一日中入り浸りってわけにもいかないから、まる一日分は作り置くとか。いろいろ工夫はしてるんだけど、思えばほんとはずっとここにいてもどうってこともないんだけどね。ライターの仕事は相変わらず上手くいく兆しもなし、セクシー家事サービスはきっぱりあれ以来やめてしまった。そのことをまだエニシダさんは知らないけど。 だからここでの仕事以外、今は特にすることもないってのが事実ではあるのだが。 だからといって心機一転、新しい仕事を探すとか。いや当然そうしなきゃいけないなという気持ちと、だとしたら青山くんの申し出にどう返事したらいい?って迷いとで頭の中ごちゃごちゃ。…って現状かも。最近のわたし。 勤務日でもないのに小まめに顔を出して猫の面倒を見るわたしに、今日はエニシダさん自ら料理に挑戦する、と手を挙げてくれた。材料をネットスーパーで頼み、わたしの持参したエプロンを身につけて。検索したレシピを睨みながらキッチンに立ってはいるけれど。 「…んー、と」 やっぱり最初から躓いてる。タブレットを目の前に地蔵のように固まってるエニシダさんの方を気にしながら、わたしはじゃれついてくる鯖虎、ミウのそこだけ真っ白な喉もとを撫でて思案した。 まあね、そうなるのは時間の問題だったかも。レシピって基本、料理を普段する人向けに書かれてるものだから。例えば 『短冊に切ります』 とか、 『塩を適量加えます』     
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