第11章 人生だとか愛だとか

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とかいう表現だって、やったことない人からしたらまず何?どんだけ?としか思わないだろう。こっそり遠くから伺うに、あの手許の様子からすると。もしかしたら包丁の持ち方からそもそも怪しいかな…。 出来の良し悪しや不揃いは構わないけど危ないのは心配だし。わたしは我慢ならずふっかりした仔猫を寛ぐおかーさんのそばに下ろして立ち上がった。そっとキッチンに入っていって、彼の背後から遠慮気味に声をかける。 「縁田さん」 ちょっと焦った様子で振り向く彼に、わたしはできるだけ穏やかに重ねて話しかけた。 「どうですか、わかりにくいとこある?つっかえたり引っかかったりしたら何でも訊いて。同じ部屋の中にいるんだから、便利に使って下さいよ」 「あ、うーん…。それだとでも。訊きっ放しになっちゃうかもだから、何もかも。次から次へと」 気が引けた様子で口ごもる。わたしは構わずさっさと隣に割り込み、シンクでまず丁寧に手を洗ってから彼に向き直った。 「いきなり一人で何もかもやるのは誰だって無理ですよ。わたしだって最初は母か姉と一緒にやらないと、何がなんだかわからなかったもん。初めはやっぱり二人で作りましょうか。できることは任せるから、調理実習くらいの気持ちで楽しくやりましょう」 そう言って手伝いながら、鶏の唐揚げと野菜サラダ、豆腐とわかめの味噌汁が無事完成したのだが。 「別に、全然できるじゃん。エニシダさん」     
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