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「大丈夫だよ。俺もお前もここんとこずっと、特に好きな相手もできなかったわけだから。そういうのはもう別に必要ないってことだろ。恋愛なんて人生に必須ってわけじゃない。それはちゃんと実感できてるだろ」
「うーん…」
わたしは彼の隣をとぼとぼ歩きながら軽く口を曲げた。すごく否定もしづらいけど。
「確かにそれはそうなんだけど。でも、今までなかったからってこれからもないって言い切れないし」
「なんだよ、いい歳してまだ白馬の王子でも待ってんのか」
おちょくられてちょっとむっとする。
「そんなこと言ってないよ。期待してるとかじゃなくて。むしろ、怖くないか。もうそういうのないだろ、って勝手に決めつけて身を固めたあとにうっかり誰かに巡り合ったりして。いざそうなって自分をコントロールすることもできなくなったらどうすんの?わたしだけじゃない、あんたもだよ。なんか、恋愛とかをふわふわした甘いもんだと思い込んで舐めてると。いつかそういうのに復讐される気がするな」
「へえ、見かけによらないな。向井ってそんな激しい恋愛したことあんの?」
無邪気な声で感嘆されてますますぶすっとなる。悪かったね、見た目通りで。
「別にないよ。仮定の話だけど、単に」
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