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プライベートクエスト
「お兄さん!」
「ん?」
「え?」
「みゅ~?」
幼い声に呼び止められ、レイアスとイリス、そしてコロンは後ろを振り返った。
冒険者の道を順調に駆け上がる青年と記憶を失った少女は頭を少し下げて少年を見た。
決して身なりがよいとは言いがたい格好だ。
「俺に用か?」
「お兄さん、冒険者なんでしょ?だったら依頼をしたいんだ」
「依頼?それならギルドに頼んでくれれば……」
「違う!」
少年は腹を立てて叫んだ。
「僕がお兄さんに依頼を出すんだ。ギルド抜きで」
「まさか……プライベートクエストを依頼してるのか?」
レイアスは驚き、その横ではイリスが不思議そうな顔をした。
「プライベートクエスト?」
「ええと、ギルドを介さずに冒険者と依頼者が契約することだよ」
彼は詳しくないイリスに説明した。
「普通は依頼主がギルドに仕事を頼んで、それを各自の冒険者が引き受けるだろ?その仲介を省くんだ。言ってしまえばクエストというより個人的なお願いだね」
「どうしてギルドに頼まないの?」
「理由はいろいろあるけど……」
「お金がないからだよ!」
少年はますます怒って言った。
「うちは必要な費用が払えないから頼めなかったんだ!だからお兄さんに頼んでるんだよ!」
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