《プロローグ》

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《プロローグ》

 そこは昼間のカンカン照りの太陽が沈んでから動き出す町。  そこかしこに灯りが点り、幻想的な夜の世界が浮かび上がる。  夜だけの町、ファッサード。  そこでのルールはただ一つ、人を殺めるな、それだけだった。  さてこのファッサードの町は、単純明快なルールで成り立っている。力あるものが勝者で、力なきものは力ある者の僕となる。ならばせめて仕える相手くらいは選びたい。誰の庇護下に入るのが賢い?  今なら誰もが口を揃えて言うだろう。漢らしい褐色の肌に、目を見張るほどに白く輝く掌を持ち、長い黒髪を背中の中央で緩く束ねた男の名を。  サウザ。それが男の名だった。
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