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出会いは再会の始まり
サウザはファッサードの比較的西の外れ、貴族達の住む本土に近い島の一角を占めていた。そして踊りや演舞に観劇、酌する女を侍らさせ、貴族共の歓待をすることが多かったので、座長としても君臨しているサウザの地位はかなり高かった。
が、彼は己の分というものに常に拘りを持っていて、飾りだけの座長ではなく、己の楽座の一番の躍り手としてその地位も不動のものとしていた。
漢らしい躍りならではの、緩急の鋭い演舞。音楽は左足首に通した鈴のついた輪っかだけで充分な「見世物」だった。
そんな風にして秩序の保たれていた世界に、一人場違いな少年がその日、サウザの一座の客席に居た。
この国の貴族である証とも言うべき白い肌の少年。ただし髪は金髪ではなく黒色をしていたが。
相手がマナーもルールも知らないからといって、ぼったくるような躾を従業員には強いていなかったが、どこか少年に懐かしいものを感じたサウザは、少年を楽屋裏へ案内してきてくれ、と仲間の一人に耳打ちし、己は舞台へと上がっていった。
熱い躍りが終わり、サウザのショーが終わると、一際大きな拍手が鳴り響く。第一幕目はこれで終わり、客席の人間が入れ替わって二幕目が上がろうとしていた時、その少年は楽屋へと入ってきた。
白色の肌、黒の髪に、水晶のように澄んだ碧眼。少年を目の当たりにして、サウザはなぜ自分がこの少年に郷愁の思いを抱いたのか、思い知らされた。
「まさかとは思うが、おまえ、トゥデール公爵の息子……か?」
いきなりの切り口に少年は言葉を失った。そしてわたわたと落ち着かなくなり、どうしたらいいのかわからないと言った顔で周囲を見渡し、中には厳しい目を少年に向けてくる団員達も居たため、余計なんと答えればいいのか困惑するだけだった少年の肩を抱くと、サウザはさらに奥の個室へと連れ去り、一人の女性の元を訪れた。
「ちょ、サウザ。いくらなんでも、入ってくる前に一声くらいかけてよね。私が着替え中だったらどうするの」
「どうもしないさ。妹相手に欲情する趣味はねぇ」
だから安心しろと言うサウザに、そういう問題じゃないとさらに噛みつこうとした女性──リズは、その時になってサウザが一人ではなく、誰かを連れてきていることに気づき、話の矛先を変えた。
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