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「誰? その子。ファッサード出身の子じゃないことは確かみたいだけど。どこぞのご貴族様がまた遊びにいらしてるのかしら?」
「貴族は貴族で金を落としていってくれる、そう邪険にあしらうものじゃない。それよりリズ、この子を見て何か思い出さないか?」
「何かって……」
サウザの話しの振りに、今度はリズが考えさせらる番だった。
白皙の肌、黒髪、だけれど碧眼の少年。この町だけではない、この国においてどうにもちぐはぐな印象しか抱けなかった。
白皙の肌を持つ人物なら、髪色は金か銀、少なくとも茶色止まりで、黒髪の白皙人種を見たのは初めてだった。
そして白皙の肌をもっておいて、瞳が赤くないというのも珍しいことだった。ずっと過去の時代は白皙の肌を持つ人種の瞳は碧眼だったという伝説めいた話をふと思い出したが、そんな先祖返りみたいなこと、と思いつつその綺麗な碧眼に見惚れていると、不意にリズの脳裏に同じ碧眼を持つ人物が脳裏に浮かび上がった。
「デルニア──その瞳、まさかデルニア姉様の……!」
化粧台から立ち上がり、思わす少年の顔に両手を当てて固定してしまった。瞳の色だけではない。顔立ちもどことなくデルニアに似て、苛烈な美人顔をしていた。黒髪に邪魔されて、すぐにはそれと気づけなかったが。
「あ、あの……」
リズの飛びかからんばかりの接近に驚いたのか、初めて少年が自ら口を開き言葉を放った。
「あの……すみません。僕は違います。僕は、その……」
言葉を詰まらす少年に、何が嘘なものかと二人にはお見通しだったが、どうやら少年には少年の事情で、まだそこを詳らかにされたくないようだったので、苛めるために招いたわけではなかったので、少年がそう言うのなら今はそれに合わせてやろう、そんな見え見えの提携にさすがの少年も気づいたようだったが、それでも居心地悪そうにしているから。
「この町に何か用があってきたのか?」
「用、というわけでは……」
「では、何をしにきた?」
「何──何をしにきたかったか……なんだろう?」
少し脳の回転が遅い子なのか、自身の意思も感情すらも感じさせず、ただサウザの言葉を鸚鵡返ししてくるだけの少年に、「一人で来たのか」と問うたサウザの言葉にだけははっきりと頷いて返した。が。
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