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「ほれ、もう油も煮立っておる。素直にテンプラにならんか」
ぼくは今一、納得ができなかったけれど、仕方ない。
海老であることがテンプラになる理由となるのなら、そういうものなんだろう。
ぼくは大人しく、カラリと揚がった。
「揚がりましたよ、長老」
「うむ、ご苦労」
本当にご苦労だ。テンプラになる労力は、テンプラを食べるそれの比じゃあない。
確かに、こんなのは長寿の象徴でもある海老でなきゃ、耐えられないだろう。
「あっつ……すみません、衣もう脱いでもいいですか?」
「ああ、すまんの。その辺に置いておいてくれ」
ぼくはサクサクの衣を脱いで、ハンガーラックにひっかける。
多少衣の欠片が長老の服につくかも知れないけれど、美味しい衣だ。長老だって文句は言うまい。
ぼくは溜息をついて、長老宅を辞した。
「あーあ、蛋白質が変性しちゃってる」
自分の身体から、美味しそうな匂いまでしてきた。最悪だ。
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