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「……私、試すようなことはしたくない」
「俺は試されたいと思っている。偽りのない答えを聞いて欲しいと」
「じゃあさ、玉彦の好きな人って誰」
「比和子」
「愛してるのは」
「比和子」
「他にはいない?」
「おらぬ」
「あんた、絶対嘘ついてるでしょ」
「付いておらぬ」
「……聞き方が悪いのかな。じゃあ、大学行ってるとき、浮気したでしょ」
「しておらぬ。そのような恥じ入ること、するか!」
「じゃあさ、あのさ、たまに鈴白に帰ってこない週末があったでしょ。その時にやましいことしてなかった?」
「……していない」
少しの沈黙の後、玉彦は呟いた。
そうか、と思う。
ここでは嘘は言えない。
でも答えないで、隠すことは出来る。
そして、冴島月子と逢っていたことをやましいと思っていなければ、そう答えられるのだ。
きっぱりと冴島月子と別れて、今は私だけを好きだ、愛してるとも言えちゃうのだ。
本気だったら浮気とは言えないのだ。
これじゃあ全然意味ないじゃん!
かと言って、冴島月子って誰? と聞けないヘタレな私を許してほしい。
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