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「比和子?」
「もう、いい。意味ないから」
「納得していないだろう!」
「なんであんたがここで逆切れしてんのよ! ほんと腹立つなー!」
地団駄を踏む私に呆れかえった玉彦は、顎を掴んで何度もキスを繰り返し始めた。
腕の中で暴れても、止めずに続ける。
「やめっ、止めてよ!」
「断る。外では無理にすると悲鳴を上げて誰かを呼びつけるだろう? こちらがどれほど我慢をしていると思っている」
「だからって、馬鹿じゃないの!?」
「何とでも謗ればいい。これは脱がすことが出来るのか? そのままでも良いが、出来れば肌を触りたい」
そう言って玉彦が私の帯に手を掛けたので、貞操の危機に私は解かれまいと抵抗をする。
攻防は続いて、私が襦袢だけになると玉彦は腰紐を手にして、口を尖らせた。
「比和子は俺の浮気を疑っているが。正武家の男は浮気は出来ぬようになっている。子種をそこここに振り撒けない様になっているのだ。愛する者以外は抱けぬ」
「嘘でしょ、だって澄彦さん……」
自分は女好きだと豪語している。
土日は夜な夜な遊びに出ては、すっきりとして帰って来るのだ。
どん引きだけど。
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