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上守比和子。
私の名前だ。
春には、正武家比和子になる。
なるんだけど……。
私は夫となるはずの玉彦の部屋で、衝撃のあまり固まっていた。
高校二年生の夏から私は鈴白村に転居して、村の名家、正武家にお世話になっていた。
高校を卒業して進学はせずに、そのまま花嫁修業に突入。
ついでに神守の眼と呼ばれる不思議な力を使いこなす為に、御門森九条さんと云う師匠にも正式に弟子入りした。
正武家は私が婚約している玉彦の実家で、彼はその跡取り息子だった。
彼の父親の澄彦さんは私の父である光一朗の親友でもある。
紆余曲折を経て、三月の玉彦の大学卒業を待って、四月に私たちの祝言が執り行われる予定だったのだけれど。
玉彦は高校を卒業すると通山にある国立大学へと進学をした。
彼の稀人である御門森豹馬と須藤涼も同じ大学へと入学。
三人は通山で一軒家を借りて、そこから通学していた。
その間、正武家のお役目の為に当主の澄彦さんは鈴白村にずっと縛られていたけれど、息子の玉彦が土日には必ず帰って来ていたので、その二日間だけ羽を伸ばすというサラリーマンのような生活をしていた。
私にとって毎週必ず帰って来る玉彦に逢えることだけが楽しみだった。
彼も、同じだと思っていた。
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