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「嫁げば、正確には正武家の男に愛された者は裏門を通らぬ限り、子に恵まれぬ」
「えっ、ええっ!?」
「やはり知らなかったか。知らぬ比和子はてっきり初夜に子を期待して俺に我慢を強いているのかと思っていたのだが。そうではないのか」
要するに玉彦は、初夜にあわよくば子供が出来れば良いなと私が考えていると思っていて、この二か月を我慢していたと。
でも実際はこの訳の分からない鈴白を含む五村の地の不可思議な力で、私は裏門を通らない限り子供は出来ないと。
で、まだ通るなと玉彦は言っている。
私が初夜に期待をしていると考えていた玉彦は、その期待に水を差してはならないと今まで我慢して気を使っていたけれど、どうやらそうではないらしいと感じて、今このおかしなタイミングで裏門のしきたりを白状したのか。
そして玉彦の中では私は、そんなことを考えていたことになっていたのか……。
だから赤くなって、照れて……。
「そっ、そんなこと、全然考えてなかったわよ! だって子供は神様からの授かりもので、しょ……」
口に出して理解をする。
神様は、授かりたかったら裏門を通れば授けますよっていうことか……。
「授かる確率は!?」
「百発百中。嫁や婿が正武家にいられる期間は限られている。失敗をするわけにはいかぬ」
「嘘でしょ……」
「違うのなら、そもそも何故拒否をしていたのだ」
「えっ」
尤もな疑問に、私は口籠った。
触られるのが辛かったって言えない。
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