第一話 携帯電話

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第一話 携帯電話

 新聞配達のアルバイトをしている石橋さんから聞いた話しだ。  今から10年ほど前のことだ。スマホもちょくちょく出回り始めたがまだ大半の人は携帯電話を使っていた頃のことである。  深夜3時半、朝刊を配達していた石橋さんは赤信号で止まった交差点から20メートルほど先のガードレールの下で光るものを見つけた。  信号が青に変わり石橋さんがバイクを走らせる。何車線もある大きな道路ではなく住宅街にある道だ。深夜3時の時間帯には人も車も殆どいない。  光るものが気になった石橋さんはスピードを出さずにノロノロと走りながら落ちている物を確認すると折畳み式の携帯電話だった。  電話かメールか分からないが着信して光っている。その頃、着信があると光るアクセサリーを付けるのが流行っていた。それがピカピカとガードレールの柱のたもとで光っていたのだ。  落とし物だと思い石橋さんはバイクを止めると携帯電話を拾った。ジャラジャラとアクセサリーが付いているので女子学生の持ち物だと思ったのだ。旨く行けば知り合いになれるかも知れないという下心があったのは言うまでもない。     
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