第一話 携帯電話

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 自分が出た通話記録が残っているだろう、相手はわけのわからない女だ。このまま捨てていくと何をされるか分からない、自分が携帯電話を盗んだなどと言い出されると厄介だと思って警察に届けることにしたのだ。  交番へと行くと奥で休んでいたお巡りさんが出てきた。  石橋が事情を話して携帯電話を渡すとお巡りさんが顔を顰めた。 「あんたこの前も持ってきたよね」  用紙に名前を書く石橋を見てお巡りさんが話しを始めた。 「この前持ってきた携帯電話の持ち主ねぇ、死んでるんだよ、交通事故だ。あんたが拾った少し向こうの交差点でね、轢き逃げさ、女の子が轢かれてね……その時に携帯電話が転がっていったんだろうねぇ、それをあんたが拾ったって事だよ」  お巡りさん以上に顔を顰めて石橋が口を開いた。 「じゃあ、電話が鳴って僕にこたえた女の人は母親か家族なんですか? 」  お巡りさんが首を傾げた。 「何言ってるんだ? あの携帯電話は壊れてただろ、電話なんて掛けられるはずがない」 「えっ!! でも…… 」  焦る石橋の前にお巡りさんが先程拾ってきたストレートタイプの携帯電話を置いた。 「これだって壊れてるよ、バッテリーが無くなってるだろ、蓋が開いて何処かに落ちたんだな」 「なっ!? なんで………… 」     
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