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「バックで戻るか…… 」
軽トラの運転席から倒れている大木を見つめて思案する。車一台が通れるだけの細い山道なのでターンなど出来ない、少し後ろにある待避路までバックしてそこでターンするしかない。
「確かあっちにも道はあったよな……遠回りになるけど仕方ない」
ガソリンをチェックする。遠回りをしても充分に持つのを確認すると軽トラをバックさせようとハンドルを握った。
その時、倒れていた大木が動いたような気がした。
「何だ? 」
ハンドルを握ったまま大木を見つめる。
山の斜面を滑り落ちてきたのか木は泥まみれだ。林業に携わっていて木に詳しい柴田にも種類までは分からない。
「檜じゃないし杉にしては大きいよな……でも良い値で売れそうだぞ、俺が働いてる山ならどうにかして運び出すんだがな」
稀に見る大木だ。昨今、国産の木材は見直されてきている。直径70センチはある大木など引く手あまただ。
「勿体無いよなぁ~~ 」
幾らで売れるか皮算用していた柴田が妙な事に気が付いた。
「丸太か? 」
よく見ると倒れている木には枝が生えていない、自然に倒れた木ではなく切り出して枝を払った丸太に見えた。
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