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左の斜面、藪がガサゴソと揺れているのを見ながら柴田は軽トラに乗り込んだ。
「山の神様だ」
柴田は藪の揺れが消えるまで軽トラの中でじっとしていた。
車のエンジンは掛かったままだ。自分が居ることは蛇も知っているだろう、だが何もされなかった。柴田は山の神様だと思った。
「大蛇だ。神様だ」
暫くして柴田は軽トラを走らせる。
何事もなく山を抜けて親戚の家へと着くことが出来た。
興奮した様子で山で見た蛇のことを話すが親戚は信じてくれない、当然だ。柴田自身もこの目で見なければとても信じないだろう。
それからもちょくちょく通るが大蛇を見たのはあの時だけだ。だが柴田は山道を通るときには日本酒を持っていくようにしている。また大蛇に遭ったときの用心だ。昔から大蛇は酒に弱いとされている。何かあれば酒を捧げて許して貰おうと思っているのだ。
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